新卒保育士に多いお悩み まとめ
- 2016-5-20
- 保育士のお悩み解決
「とにかく子どもが大好き。子どもと関わる仕事が夢だった」
「ついに念願かなって憧れの保育士に。嬉しい、がんばろう!」
保育士を目指して勉強に励み、難関とされる国家試験に合格し、ようやく夢をつかんだ新卒保育士の皆さん。
希望と期待に胸をふくらませて、初めて子どもたちと向き合った日から2か月、今、皆さんの心にはどんな思いがよぎっているでしょうか。
じつは、実際に保育の現場を目の当たりにして、夢と現実のギャップに驚き、戸惑い、悩む人が出てくるのがこの時期。
「こんなにきつい仕事だとは思わなかった」
「学校では教えてくれなかったことばかりで、毎日が失敗の連続・・・」
即戦力として現場に放り込まれ、仕事を覚える暇も与えられず、次々と押し寄せる業務の過酷さに、
「自分は保育士には向いていないのかも・・・」
そんな心の声が聞こえてくる新卒保育士さんも少なくないといいます。
それでは、保育士としてスタートしてまだ間もないこの時期に、新卒の皆さんが抱き始める悩みとはいったいどんなものなのでしょうか。
今回は、新卒保育士さんが抱えがちな悩みを分析しながら、その原因ともなるアクシデントの予防策、そして注意したい五月病の対処法まで、詳しく探っていきたいと思います。
新卒保育士のお悩みトップ5とは?
意気込んで飛び込んだ保育の世界、そこに待っていた厳しい現実。
中には「もう辞めたい・・・」とまで思い詰めてしまう人も。
まずはこの時期、新卒保育士さんによくあるお悩みを見てみましょう。
●お悩み(1) 理想と現実のズレが大きい
「いつも明るく元気で、子どもたちにも笑顔で接する優しい保育士さん」
そんな理想のイメージは、日々の業務に追われるうちに、次第に色あせていきます。
目の回るような忙しさ、指示を聞かない子ども、度重なる失敗・・・
激務に翻弄され、疲れ果てた自分の顔から笑顔が消えていたことに気づくとき、新卒保育士は自分を責めるでしょう。
「どうしてあんな叱り方をしてしまったんだろう」
「もっと子どもたちと楽しめばよかった」
「また時間内に終わらなかった・・・」
保育士の仕事が、子どもとはいえ人間相手である以上、ときには感情的になったり、効率よく進められなかったりするのは仕方のないこと。けれど、「理想の保育士」のイメージがまだ強いこの時期には、そのギャップが新卒保育士の心に重くのしかかるのです。
●お悩み(2) 保育という仕事の重さ
これは、実際に保育士として子どもを預かってみないと決してわからない感覚かもしれません。
「子どもが好き」「子どもと遊ぶのが得意」という点には自信があっても、「全員に常に100%安全な保育をする」と言い切るには、肉体的にも精神的にも相当なプレッシャーがかかります。とはいえ、そうするのがあたりまえなのが保育の世界。
子どもの命を預かるという責任の重さを痛感し、いつも気を張っている日々に疲れ果ててくるのがこの時期なのです。
●お悩み(3) 先輩保育士との人間関係
まだまだ女社会の傾向が強い保育の世界。女性同士ならではの人間関係の悩みは、新卒保育士にも容赦なくふりかかってきます。
また、体育会系のような年功序列の根強い職場もよく見られ、その場合は新人であるというだけで「しごき」の対象になってしまうことも。
「無視される」「八つ当たりされる」「仕事を教えてくれない」「自分のいないところで悪口を言われる」「仲間外れにされる」など、職場内の新卒に対する冷たい仕打ちに悩み、早くも転職を考える新卒保育士は決して珍しくありません。
●お悩み(4) 保護者との付き合い
保育士にとっては、子どもと同じくらい、保護者との付き合いも大切。
けれど、新卒保育士はどうしても保護者から軽視されがちで、信頼関係を築くまでには時間と実績が必要になります。そこで保護者に心を開いてもらおうと、毎日子どもの姿を伝えたり、家での様子を聞いたりと、新卒保育士は心を砕くもの。
それでも「本当はベテランの〇〇先生にお願いしたかった」などと言われて、傷つくこともままあるのが現実。また、連絡の不備などミスがあると「やっぱり新人は・・・」と言われてしまい、ますます自信を失うことも。こればかりは、経験を積む以外に解決の手立てはありません。
●お悩み(5) 労働条件の悪さ
保育士の忙しさや待遇の悪さについては聞いてはいたけれど、それを身をもって経験し、思わず悲鳴を上げてしまう新卒保育士も多いようです。
子どもの相手から事務、雑用まですべてこなす「超多忙な業務」、残業や持ち帰り仕事が日常の「長時間労働」、それでも全業種平均よりかなり低い「給料の安さ」。
大きな夢とビジョンを抱いて飛び込んだ保育の世界、けれど理想の保育を実現するためには、自分自身がエネルギーに満ち、パワフルである必要があります。それには時間の余裕、経済的な余裕、そして何より心の余裕が不可欠。そのことに気づいた新卒保育士はふと立ち止まり、今の職場で仕事を続けていくことに不安を覚えるのです。
新卒に多いこんなアクシデントを防ぐには?
ここまで見てきた新卒ならではのお悩み。そこにさらに追い打ちをかけるのが、新卒保育士が起こしがちな数々のアクシデントです。
今ある悩みをさらに深くしないよう、よくあるアクシデントとその予防策を知っておきましょう。
(1) 出勤時刻を間違える
社会人である以上、時刻を守るのは基本ですが、とくに保育士はシフト勤務のことが多いため、ついうっかり間違えて遅刻する、といったことがよくあります。
遅い時刻のときはまだいいのですが、早く出る当番の日に遅刻すると、園自体が開園できず、保護者と子どもたちが待ちぼうけ、という事態にもなりかねません。
これを防ぐには、毎晩眠る前に必ず、翌日の出勤時刻を確認するのを習慣にすること。わかっていると思っても、油断は禁物です。朝起きられない人は、目覚ましを部屋のあちこちに数個かけておくなど、工夫しましょう。
(2) 保護者へ伝えるべきことを忘れる
保育中のちょっとした体調不良や、小さなケガは、お迎え時にはつい忘れてしまい、何も言わずに帰してしまいがち。けれど、あとから容態が変わったり、痛みが出たりといったことも十分考えられます。保育者にとっては大勢の園児たちの一人でも、親にとっては大切な我が子。どんな小さいことでも、必ず伝えるようにしましょう。忘れないためには、とにかくその場で連絡帳やメモに書き留めておくこと。
(3) 保護者を間違えて話しかける
新卒保育士が、保護者を間違えて子どもの話など始めてしまい、怪訝な顔をされたという失敗はわりと起こりがち。けれど間違われた保護者はがっかりしますし、その後の人間関係にも気まずさが残ります。相手があやふやなときは、あたりさわりのない世間話にとどめてその場をはずし、他の保育士に確認すること。もし間違えてしまったら「まだ皆さんのお顔を把握していなくて」と心からお詫びしましょう。
(4) 子どもを呼び捨てにする
クラスに慣れ、子どもたちとも仲良くなったころについ犯しがちなミス。けれどこれは大きなタブーです。園にはいつ保護者が来るかわかりませんし、たとえその子どもの親でなくても、「あの園では子どもを呼び捨てにする」と不快に感じるでしょう。また、子どもが真似して呼び捨てで呼び合うようになる危険も。どんなときも必ず「〇〇くん」「〇〇ちゃん」と呼ぶように意識しましょう。
(5) 子どもがいるところで泣く
保育士も人間、泣きたいほど辛いときもあります。そして感情をあらわにする子どもたちと過ごしていると、ついこちらも抑制がきかなくなりがち。けれどどんなに辛くても、子どもたちの前では涙は厳禁です。「先生が泣いていた」のは子どもたちにとって大事件。すぐに保護者にも伝わると思いましょう。どうしても涙が出てしまったら、その場をはずして気持ちを落ち着かせてから戻ること。
保育士にも多い五月病、うまく乗り切るには?
なんといっても保育士になってまだ2か月。
「うまくいかないことばかり・・」そうつぶやくのも無理はありません。
けれど、次のようなことが多いなら、それは心身ともにしんどくなってきているしるし。
続いては、この時期、気をつけたい五月病とその対処法についてお伝えしましょう。
●いくつ当てはまる? 心のお疲れ度チェック●
・子どもの言うことややることが理解できない
・自分の指示は子どもに伝わらない
・子どもをかわいいと思えない
・自分のクラスは落ち着きがなく、周りに迷惑をかけている
・自分は保護者からよく思われていない
・先輩に聞きたいことがあっても、怒られそうで聞けない
・てきぱきと仕事がこなせず、冷たい目で見られている
・自分は保育士には向いていないと思う
・朝、園に行くのがおっくう
・何事にもイライラしたり、やる気が出ない
・食欲がない
・寝つきが悪い、何度も目が覚める
以上のチェックが多かった人は、かなり心身の負担が大きい状態と考えられます。
この時期に多く見られる五月病とは、新しい環境への適応がうまくいかないために起こってくる、うつや無気力、不眠などのさまざまな精神・身体症状のこと。
真面目で責任感の強いタイプが多い保育士には、とくによく見られる症状です。
「五月病かも・・・」と気づいたら、次のようなことを心がけてみましょう。
●周りと比較しない
「他の保育士はあんなに頑張れるのに、自分は・・」
「こんなミス、他の誰もしていないのに」
などと、自分に厳しくなりがちな新卒保育士。
けれどいくら自分を責めても誰のためにもなりません。肩の力を抜き、「自分は自分、それでいい」と認めてあげましょう。心にゆとりが生まれれば、それに伴って状況も必ず変わってきます。
●「ま、いいか」の精神で
「こうでなくてはいけない」と細部にまで完璧を求め過ぎると、やがて息切れしてしまいます。
多少思いどおりにならない部分があっても、大切なポイントがしっかり押さえられていることを確認したら、「ま、いいか」で乗り切るのもひとつの手。口にすると、気分が軽くなるのがわかるはず。
●一人で抱え込むのはやめる
悩みを頭の中でぐるぐる回していると、どんどんふくらんでしまいます。出口を作ってあげないと、やがて爆発することに。一番いいのは吐き出してしまうこと。家族や友人、信頼できる先輩保育士など、聞いてくれそうな人にどんどん話してみると、意外なほど気分が楽になります。
言葉にして伝えることは、自分の悩みを客観的に見るきっかけにもなって一石二鳥。
終わりに
「一年目が辛くない保育士はいない」とよく言われます。
けれど保育士に限らず、最初から何もかも理想どおり、うまく運ぶ仕事はありません。
どんな仕事にも、失敗や挫折、さまざまなつらいことを乗り越えた先に、初めて見えてくるやりがい、面白さがあるのではないでしょうか。
今、とても辛くて辞めたいと考えていても、どうか一年だけ、保育士として頑張ってみてください。
きっと、来年の新卒保育士がやってくる頃には、数々の悩みを越え、経験を積み、保育の喜びを知った先輩保育士の皆さんが、笑顔で出迎えていることでしょう。
保育士になって初めて対面したこのハードルを、力強く乗り越えて前進していかれるよう、心から応援しています。