食物アレルギーを持つ子のために。誤食・誤配、どう防ぐ?
- 2016-4-25
- 保育士のお悩み解決
今の季節、花粉症でゴーグルやマスクをしている子どもをよく見かけますね。
保育園でもアトピー性皮膚炎や喘息など、何らかのアレルギーのある園児は多いことでしょう。
中でも食物アレルギーは、症状が命にかかわることもあるため、給食やおやつを出す園ではとくに配慮が求められるもの。
そこで今回は、乳幼児の5%~10%がもつというこの食物アレルギーについて学びながら、保育園での実態や、誤食・誤配事故を防ぐためのポイントを見ていきたいと思います。
食物アレルギーの症状
身体にとって有害ではないものに免疫が働き、さまざまな反応を引き起こすアレルギー。
食物アレルギーでは、食物に含まれるたんぱく質をアレルゲンとみなし、攻撃するためのIgE抗体が多量に作られ、これがアレルギーの症状を引き起こします。
食物アレルギーの症状は、皮膚症状などの軽いものから命の危険のある重い全身症状(アナフィラキシー)まで多岐にわたり、口から入るだけでなく、触れたり吸い込んだりしただけでも発症することがあるので、厳重な注意が必要になります。
症状は多い順に、
●かゆみ、赤み、じんましん、むくみなどの皮膚症状
●せきや喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸)、呼吸困難などの呼吸器症状
●くしゃみ、鼻水、目の充血などの粘膜の症状
●腹痛、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状
●ぐったりする、頻脈、意識障害などのショック症状
などがあり、これらはひとつだけ現れることもあれば、次々に複数の症状が出てくることも。
食物アレルギーを引き起こす原因として最も多いのは、鶏卵、牛乳、小麦。
続いて甲殻類、果物、そば、魚類、ピーナッツ、魚卵、大豆、ナッツ類、肉類、となっています。
保育所の3割で起きている誤食・誤配事故 実例
今年2月に全国の保育所に対し行った大規模調査では、食物アレルギーの子どもに原因となる食材の入った食事を与える誤配や、目を離したすきに食べてしまうといった誤食が、約30%の施設で起きていたことがわかりました。
これによって、子どもがじんましんや唇の腫れなどの症状を発症したケースは11%。原因としては約半数が単純な配り間違い、「他の子どもの食べ物を食べた」が18%、「原因食材の見落とし」が14%と続いています。
では実際にはどのような事故が起きているのでしょうか。いくつか実例を見てみましょう。
事例① 1歳の男の子
おやつのチョコレートケーキに、ミルクココアが使われていたのを見落として、乳アレルギーの園児に提供してしまった。食べている途中で保育士が気づき、中断、観察を行う。
耳のかゆみが発生したが、二時間後におさまった。
事例② 5歳の女の子
保護者が調理に参加するクリスマス会で、アレルギー児用のうどんに飾りのかまぼこを入れてしまった。卵アレルギーの園児が、かまぼこを除いて食べたところ、咳、鼻水が発症。続いて手足にじんましんが出たため、保護者とともに帰宅。夜にはおさまったとの報告を受ける。
事例③ 3歳の女の子
卵なしのホットケーキを提供された卵アレルギーの園児が、目を離したすきにおかわり用の卵入りホットケーキを食べていた。常備していた内服薬を飲ませ様子を見るが、腹痛を訴えたため保護者に連絡して病院を受診、点滴を受けておさまる。
①のような単純な見落としは最も多く、栄養士、調理師、保育士による配食前のダブルチェック、トリプルチェックが重要になってきます。
②はイベントでいつもと違った調理体制になっていたため、とくに注意が必要でした。
また③のように、自分に配られたものでなくても食べてしまうことがあるので、食事中も目を離さないことが大切です。
誤食・誤配を防ぐ方法
●部屋にアレルギー児用の献立表を貼り、メニューを把握しておく。
●アレルギー児の食器やトレイは色付きのものにしてわかりやすく。
●名前のバッジにアレルギー食品を書いたシールを貼る。
●アレルギー児は別のテーブルにして、目を配りやすくする。
●アレルギー児への配膳は担任が行うなど、決めておく。
●アレルギー食を先に用意し、しっかり確認しながら配る。
●配膳のときはラップをかけるなどして、アレルゲンの混入を防ぐ。
●配膳台のものやほかの子どもの食事を食べないよう、担当を決めてアレルギー児を見守る。
●保育士の手や、ふきんにもアレルゲンがついていることがあるので注意。アレルギー児に対応する前には手洗いをする、ふきんは専用のものを使うなど工夫する。
これらのような工夫とともに、献立を立てる栄養士、食事を作る調理師ともしっかり情報を共有し、アレルギー児に対応していくことが大切です。
原因食材を使わない取り組みも
通常食とアレルギー食を同時に提供する限り、起こりうる誤食・誤配。
大阪の「おおわだ保育園」では、小麦・卵・乳製品を完全に除去した「なかよし給食」を全園児に提供し、食の安全と安心を実現しています。
小麦粉を米粉、牛乳を豆乳、マヨネーズは卵を使用しないもの、と代替食品をうまく使用することで、約一割いるアレルギー児もみんなと同じメニューを食べられるようになり、保護者からもとても喜ばれているとのこと。
この取り組みは厚生労働省の食育白書でも取り上げられ、同じように原因食材を使わない給食を導入する保育園も出てきているようです。
まとめ
保育園での給食やおやつはみんなが楽しみにしているひととき。
けれどアレルギーのある子どもにとっては、ちょっとした手違いが、辛い症状や、ときには命にかかわる大きな事故につながります。
身を守るすべを持たない子どもたちのために、保育スタッフが食物アレルギーに対する正しい知識と対処法を身に着けることはもちろん、誤食・誤配事故を未然に防ぐためには、栄養士・調理師・保育士が連携して対応できる、しっかりとした体制づくりが重要だといえるでしょう。