大地震のその前に…普段からできる保育園の防災対策チェックリスト


最高震度7を記録した先日の熊本地震。多くの保育園や幼稚園も被災しました。
日中の保育時間ではなかったことが不幸中の幸いでしたが、それでも
「すぐ浮かんだのは子どもたちのこと。無事でいてほしいと、真っ先に頭をよぎった」
「もし保育中だったら・・・守れるのは保育士だけ。冷静な判断ができるようにしないと」
などと、多くの保育士さんが危機意識を新たにした、今回の地震だったようです。

いつどこで大地震が起きてもおかしくない、地震大国・日本。
そのため国民の防災意識は高く、建物の耐震性はもちろん、生活用品の備蓄や避難経路の確保など、いざというときのための備えをしている人がほとんどです。
その中でも子どもや高齢者、病人を預かる保育施設、介護施設、病院などは、特別な配慮が必要。
そこで今回は、保育園で起こりうる被害をあらためて確認し、安全対策チェックを行ってみていただきたいと思います。ぜひ災害に強い、安全な園づくりに役立ててください。
また、子どもたちへの防災教育のあり方についてもご紹介していきます。

地震発生!! 園内ではいったい何が?

強い揺れが園内にもたらす被害はさまざま。
どんなことが想定されるのか、場所ごとにみていきましょう。

●保育室●

・本棚の転倒や移動、収納していた物の散乱
・オルガンやピアノの転倒、移動
・テレビの落下
・窓ガラスの飛散
・照明器具の落下・飛散
・時計、スピーカーなど壁掛けの機器の落下
・扉がはずれる、倒れる

●廊下●

・下駄箱の転倒、移動
・照明器具の落下・飛散
・窓ガラスの飛散
・消火器の落下、転倒

●体育館、多目的ホール●

・ピアノの移動
・大型照明器具の落下・飛散
・出入り口の扉がはずれ、倒れる

●給湯室●

・食器棚の転倒、移動
・食器類の落下、散乱

●屋外施設、園庭●

・固定遊具の倒壊、崩落
・ブロック塀の崩壊
・看板などの落下
・エアコン室外機の落下、転倒
・倉庫の倒壊、崩落

耐震防災チェック! ○? それとも×?

それでは次に、現状のチェックを行ってみましょう。
○であれば合格、×の項目は、見直しが必要です。

(1) 園舎や体育館などの耐震診断を受けてOKが出た。
(2) 園庭のブロック塀や遊具の基礎、倉庫の強度を確認している。
(3) ピアノ、本棚などの大きな家具は固定や転倒防止対策をしてある。
(4) ガラス窓には飛散防止シートを貼っている、または強化ガラスにしている。
(5) 照明器具を固定し、飛散防止対策をしている。
(6) ピアノやテレビなどの備品は高いところ、不安定なところ、出入り口付近には置いていない。
(7) 防災マニュアルがあり、定期的に見直しをしている。
(8) 緊急時用の連絡網がある。
(9) いざというときのための生活用品をそなえている。
(10) 職員と園児の避難訓練は定期的に行っている。
(11) 保護者の引き取り訓練を行っている。
(12) 地震に関係した絵本やビデオで防災教育をしている。

これだけは用意したい備品とは

地震が起きたとき、すぐに取り出せるよう、非常用備品の場所はスタッフ全員が把握しておきたいもの。食品、水、薬は定期的にチェックして入れ替えるようにします。

●非常食(3日分程度)
●飲料水(トイレ用も含み、3日分程度)
●毛布
●救急用品、薬
●紙おむつ
●粉ミルク
●離乳食
●哺乳びん
●ホイッスル(避難誘導用)
●ラジオ(情報収集用)
●マッチ、ライター
●ビニールシート
●園児、教職員用の着替え

防災教育の大切さ

保護者のいない場で地震が起きたとき、子どもたち一人一人を守るだけの保護が万一行き届かなかった場合に、大切になってくるのは子どもたちが「自分を守る力」。
それは、まず何が起きたのか理解し、過度に動揺しないための「知識」、そして目の前の危機から自分の命を守れる「判断力」、この2点です。
幼い子どもたちに、災害時の適切な行動力を身につけさせるのは難しいと思われがちですが、日常の保育時間に、楽しみながら学べる絵本やビデオ、体験プログラムなどを活用すれば効果的にアプローチすることが可能。
ここでは、災害時の危険や身を守る方法を体験できるプログラムや、防災のイメージを伝える絵本、ビデオなどをご紹介しましょう。

防災教育プログラム

「卵の殻を使ってガラス飛散を体験」
地震につきもののガラスや割れ物の飛散。あわてるあまり、靴やうわばきをはかないまま、足元に注意を払わず動くと危険です。そこで、シートの上に卵の殻をばらまき、園児にはだしで歩かせて、その痛みを体験させます。「地震のときは、はだしではケガをする」と身をもって理解できるプログラム。

「地震がきたらだんごむしポーズ体験」
揺れを感じたら、まず守るべきなのは頭であること、そのためには机の下にもぐったり、かばんやクッション、ぬいぐるみなどで頭を守ることを教えます。そのうえで、もし身近に何もなかったときのために、だんごむしのように体を丸めて、手で頭を抱える「だんごむしポーズ」を体験させます。「だんごむし!」と言ったら反射的にこのポーズをとれるよう、ふだんから保育や遊びにも取り入れてみましょう。

紙芝居・絵本・ビデオ

紙芝居「あわてない あわてない (いのちを守る防災かみしばい じしん・つなみ・たいふう)」(童心社)
保育園でのお昼寝の時間。みんなのいびきに混じって、「ゴゴゴゴーッ」という音。地震です! みんなは大騒ぎ。そんなとき先生の「あわてない、あわてない」の一言が・・・。揺れがきたらまず何をすればいいか、とっさの正しい対応を、明るく温かい絵柄でやさしく教えてくれます。子どもにもわかりやすい内容で、絵が変わるたびにぐんぐん引き込まれていく紙芝居です。
http://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494079803

絵本「あっ! じしん」(学習研究社)
子どもたちが、地震のときのさまざまなシーンをイメージし、命を守るための方法を考えることができる本。地震が起こるしくみから、防災の大切さまで、しっかりと子どもの心に残る内容で、大人も楽しみながら一緒に学べます。「防災の手引書」つき。
http://hon.gakken.jp/book/1020230800

ビデオ「ぐらっとゆれたら・・・どうするの?」(学習研究社)
幼児向け安全教育ビデオ5巻シリーズの、第1巻。地震のときにとるべき行動を、くまのオロロくんと園児が一緒に考え、答えを導き出せる内容になっています。歌とダンスも収録されていて、最後まで飽きずにくりかえし楽しめます。
http://www.hihirecords.com/moshimo/

まとめ

天災は予測することができません。
だからこそ、いつ起こっても良いように、ふだんからの備えが重要になってきます。
とくに子どもたちを預かる保育園では、まず何よりも、子どもたちの命を守るために、スタッフが迷わず一丸となって動かなくてはなりません。
耐震補強や備品の固定、生活用品の備蓄のようなハード面から、連絡体制、避難ルートの整備、防災教育などのソフト面まで、平常時からおろそかにせず見直していくことが、災害に強い安全な園を実現するための必須条件といえるでしょう。


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